本当にカッコイイ傘を創りたかった。
ありきたりのデザインじゃなくてさ。
小川 藤田君、あなたは、どういう男の日傘を作りたかったの?
藤田 その前にですね、僕は営業という面からも、ぜひともこの企画に参加させていただきたかったんです。だから、夢が叶ってよかったです(笑)
小川 そもそも私がこの企画を立ち上げたときの思いは、オン・オフでカジュアルでとか、思いやりの傘とか、いろいろやりましたけど、究極のところは、本当にカッコイイ傘を創りたかったのよ。
30~40代のいかした男たちが読む『オーシャンズOCEANS』なんかに掲載してもらえるような、カッコイイ日傘をね。それがだんだんと変化して、今の「男の日傘 TOISTO -トイスト-」になったんだけど…。
藤田 そういえば最初の企画会議のときに、パイキングがいかしてるとか杖の部分がいいとか、そういう話じゃなくて、自分だけの、自身のかっこよさを目指してほしいみたいな社長の思いをお聞きしました。そのとき、かっこよさの象徴として具体的に話されたのが、ジュラルミンのバッグとかで、男ならではのかっこよさは……、みたいな話しもされていました。
小川 まあね……。もともと僕は、精密板金加工に皮という異素材を組み合わせてヒットした『エアロコンセプト』を心からリスペクトしていたからね。自分も究極創りたいのは、『エアロコンセプト』みたいな商品なんですよ。いつか! という夢はあるんです。でも、うちが創るものは、今はもっとカジュアルでいいのかなあと思ってます。
藤田 僕がすごく印象に残っているのは、社長が、「とはいえ、三角形のてっぺんを目指したい」とおっしゃったことで、「ありきたりの、みんなが買うようなものじゃなくて、本当にほしいヒトだけが買ってくれる商品でいいんじゃない」っていうのを聞いたときに、すごく共感できたんです。
小川 好きなヒトに買ってもらえればいいっていう感覚は、最初からあったからね。僕らの創ったのはコレだから、このデザインが好きなヒトに買ってほしい。ありきたりのデザインじゃおもしろくないよ、どっかにポイントがあっていいと思う。
藤田 今までは、常に売り上げありきで考えてましたが、それを逸脱した結果が、今回のTOISTOだったんじゃないですか!
TOISTOって、料理にたとえれば、創作料理みたいな傘なんです
藤田 今日はおいしい料理をいただきながら、「男の日傘 TOISTO -トイスト-」ができあがるまでの思いや裏話などをお話させていただいてるんですが、料理には、日本料理、西洋料理といったくくりがありますが、このTOISTOは、さしずめ創作料理のような日傘だなあと思うんです。
小川 なるほど…。
藤田 そりゃ、好きな人もいれば、嫌いな人もいるだろうけど、創作料理を創るとき、作り手はカテゴリーにしばられずに、オリジナルにこだわって、季節ごとの食材の持ち味を活かして真心込めて料理を創りますよね! おいしく食べてほしいから、見た目にもこだわってかっこよく盛りつけて! TOISTOも、そんな位置づけなのかなあと思うんです。
小川 今までは、そんな風に考えて作ったことはなかったよね。
藤田 ですよね。
小川 販売店の方の意向とか消費者のニーズに合わせないといけないという気持ちもあるし、当然、売り上げもあげなきゃならないから、創作というところまで思いが至らなかったことは確かにあったと思う。
小売店さんも商品を一生懸命に差別化してご商売されているし、自分たちのお客さまに見合った商品かどうかを、吟味して品揃えするわけだから、こちらも、そこは重要視して商品を作らなければならないしね。で、今回、いいと言ってくださる方が数多くいらっしゃったことが、すごく嬉しい。
TOISTOには、僕らが作った公式みたいなのがあるよね。
藤田 TOISTOは、ひと山1000円みたいな商品ではなくて、本当にこのデザインが好きだと思う人に向けて、制作してきましたからね。
TOISTOを持ってお店をまわってみても、ストライクとアウトがはっきり分かれます。好みでないとおっしゃる方もいらっしゃいましたし……。
小川 それくらい反応のある傘を創ったってことだ!
藤田 営業に行っても、今までは、とりあえずこのラインナップで入れてくださいって小売店さんが多かったんですが、今回は、入れるか入れないか確認をとるほど、好みが分かれましたからね。
「TOISTO」って、再生っていう意味なんだけど、今の時代にピッタリなネーミングだったね!
小川 近年、世界的に有名な日本の大企業が次々に本業から撤退し、新しい事業に参入していってるでしょ。つまり、今までの事業が凋落した結果なんだけどさ。 もうね、何かこう、自分たちのやっていることが、10年後果たしてこういう形で続いているかどうか、疑問に思うわけよ。だってさ、5年前にスマホでこんな風にメールを打つ姿、想像ついた? つかんかったでしょ!
我々だって、今までにない傘を創れる時代になったってことだよ。
そういう時代に「男の傘、TOISTO -トイスト-」は誕生したわけで、だからこそ、この傘に付けられたネーミングの意味、「再生」っていう言葉はいいよねえ。
藤田 これからは、誰もが「留まっている時代じゃない」ってことですね。
小川 そう、そんな場合じゃないのよ!
TOISTOは誕生したばかりだけど、来年に向けて、また走り出さなければならない。
来年、何かやりたいことある? 僕はね、新しいことを提案したいと思っている。デザインは僕にはできないけど、発想でね!
藤田 社長は、トイストのどこが一番気に入っていますか?
小川 カラーリング、そして色のコントラスト!
藤田 僕は、一目見ただけで違いが分かるその個性的なイメージですね。手元も気に入っています。
小川 いいよねえ。傘の中にまでこだわって色で魅せたのもいいよね。
藤田 僕は、カラーはこのまま継承していき、さらにそれを発展させていきたいです。
小川 あのカラーはやめちゃだめだよ。
継承するものは継承して、次なる新しいTOISTOを目指してまた走っていきましょう。もっと高い目線で我々の傘を評価している人はいるわけだから、そういう人をうならせる傘を創らないと……。メンズ傘ブランド「トイスト」を、これからも、もっともっと進化させていきましょう。